生徒の多様化に対応する高校の施設計画について、昨年度の単位制高校に続き、本年度は総合学科高校を対象とし、併せて、新しいタイプの学校づくりの例として特色する数校の視察調査を行った。 1.総合学科制高校の施設計画に係わる実態を明らかにした。調査は平成6年度発足の全国7校に対して、郵送によるアンケートと、時間割・選択科目・履修方法・平面図等の資料収集を行った。2校については現地調査を実施した。各校とも、既設校の改編で、既存施設を一部改造してスタートし、計画中が2校見られた。 2.ケーススタディとして、総合学科高校として平成8年度に発足予定のF県立Y高校の施設計画の検討プロセスと提案内容を整理分析した。Y高校は現在の全校11学級を24学級とし、既存校舎に増築して対応する計画である。所与の面積条件の中で、総合学科の特性に対応するため、次の提案が行われた。(1)系列の関連づけ (2)少人数ホームルーム編成。それによる教室数、大きさの多様化 (3)2、3年での教科教室型の採用 (4)教室の再構成と配置の見直し (5)生活空間の充実。これらは教員との話し合いが重ねられて合意に達した。 3.Y高校と同一の計画条件を前提として、本来必要な室・面積構成を検討し、モデル設計の提案を行った。主な内容は、(1)教科、系列ごとの所要教室数の算定 (2)系列の要望を反映できる実習教室面積 (3)教科のメディアセンターの設定 (4)普通教科への大教室、ゼミ教室の配置 (5)教科研究室、準備室の必要面積の確保 (6)2、3年の各ホームルーム面積の確保 (7)2、3年の学校生活の拠点としてのホームベースの設定、(8)選択指導のためのガイダンス室、進路指導室 (9)全校の情報伝達空間となる玄関ホール。以上に基づく校舎面積はY高校の1.7倍に相当し、総合学科の施設計画には、独自の面積基準が必要であることが認められる。
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