1.チュウゴクナシの成熟特性をエチレン生成の面から検討した所、切断に伴うエチレン生成はすべての供試品種で認められたが、成熟に伴う生成は品種によっては認められないものがあった。対比のために供試したニホンナシとセイヨウナシでは、切断に伴うエチレン生成はすべての品種でみられたが、成熟に伴う生成は前者ではないか又は極く微量であり、後者では明らかに認められた。このことから、ナシ果実はすべて傷害性エチレン生成はみられるが、成熟型エチレン生成はセイヨウナシでは明らかに認められ、ニホンナシでは極く微量であり、チュウゴクナシでは品種によって異なることが明らかになった。 2.チュウゴクナシで、成熟型エチレン生成が認められる品種と認められない品種のエチレン生成系について比較検討した。エチレン生成がみられる品種では、直前の前駆物質である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)含量、ACC合成酵素活性、ACC酸化酵素活性はいずれも明確に認められた。一方、エチレン生成がみられなかった品種では、ACC酸化酵素活性は認められたが、ACC含量とACC合成酵素活性は認められなかった。このことから、エチレン生成がみられない品種では、ACC合成酵素が制限要因になっていることが推察された。 3.エチレン生成の有無をACC合成酵素をコードする遺伝子レベルで解析するため、チュウゴクナシ果肉から全RNAを抽出して逆転写酵素によってcDNAを合成し、これをテンプレートとしてポリメラーゼチェーン反応によってDNAを増幅して、現在そのクローニングを試みている。現時点では最先端手法であるため試行錯誤が続いているが、鋭意取り組み中である。
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