1.低温耐性:13品種を用いて、全果及び果実から誘導したカルスについて5℃下での障害発生状況を調査したところ、4品種では2〜3週間後に明らかに果肉褐変が認められたが、他は13週間後も健全であった。障害発生果について電解質漏出を調べたところ、アレニウス・プロットで明らかにブレイク・ポイントが認められた。このようなことから、中国ナシは品種によって低温耐性が相異することが明らかになった。この耐性の差の原因を探るため、低温耐性に関与すると考えられている膜リン脂質の脂肪酸組成、トノプラストATPase活性、アブシジン酸含量、プロリン含量等を比較検討したが、この調査の範囲では品種間差を説明することはできなかった。 2.エチレン生成系の遺伝子レベルでの解析:前年度調査で、品種によって成熟型エチレン生成が認められないものがあり、これはACC合成酵素活性が制限要因になっていることが明らかになった。そこで本年度にはエチレン生成系の二つの律速酵素、ACC合成酵素及び酸化酵素をコードする遺伝子について品種間比較することを試みた。中国ナシ品種7品種、日本ナシ2品種、西洋ナシ1品種から改良SDS-フェノール法で全RNAを抽出し、これから合成したcDNAライブラリーをテンプレートとしてPCR増幅を行った。増幅遺伝子フラグメントを大腸菌プラスミドに導入し、ナシ果実の遺伝子を持つ大腸菌コロニーを得ることに成功した。現在、導入遺伝子の塩基配列の解析を鋭意進行中である。
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