この研究ではヒトの各種細胞株のタンパク質を2次元電気泳動のパターンによって特徴づけ、さらにそれらパターンの重ね合わせとしてヒト細胞のタンパク質をデータベース化しようと計画している。さらに2次元電気泳動像のなかで比較的大きなスポットとして得られるものは分離してアミノ酸配列を決定する予定である。現時点までの研究経過及び結果は次のようである。HeLa細胞核の調製は細胞を界面活性剤で破壊して粗核を得ている。これをスクロースクッション法で精製後、超音波を用いて破壊してその遠心上清を実験に用いている。最近この核の精製時に多くのタンパク質が漏出している事が分かった。現時点では2次元電気泳動は大きさ16cm×16cmのものを使用している。電気泳動パターンの標準化のためにバイオラド社のSDS電気泳動用の分子量マーカーを使用している。IEFの泳動パターンは特にアルカリ側pHで高分子量に現れるタンパク質の分離が思わしくなく、特にタンパク質分析に必要なクマシー染色程度の蛋白量での分離は貧弱である。またNEPHGE法も行っているが、スポットが必ずしもゲル一面に分散しない。タンパク質スポットの同定にはブロッテング膜中のタンパク質N-末端の分析またはin situ での酵素消化でペプチドを分離分析している。得られたアミノ酸配列はGenetyx社の遺伝情報解析ソフト及びオンラインで遺伝研のPIRまたはswiss-protのデータベースでホモロジー解析を行っている。この様にして現在までに約40スポットの解析を行い配列の得られたスポットは約20個でその内一つは未知のもので、5個はバリアントまたは相同のものであり、残りは既知のものに一致していた。
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