この研究はヒト細胞タンパク質を二次元電気泳動上のスポットとして展開し、そのタンパク質のアミノ酸配列を求めてこれらをデータベース化することや各種細胞に発現しているタンパク質を二次元電気泳動パターンとして捉えることで、ヒトゲノムが保持する未知タンパク質の発見やその機能を見いだすことを目指している。 2次元電気泳動には一次元目に固定化pH勾配による等電点電気泳動法を用い、二次元目にラージフォーマット(22×22cm)のゲルを用いることで安定した再現性と十分なタンパク質量の分析が可能となった。この際一次元目の等電点電気泳動で、泳動時の温度を25度にして約60時間の泳動を行うとタンパク質スポットのストリーキングを著しく減少させることができ、これによりヒト細胞の抽出物から約2500から3000個のタンパク質スポットを分離することが可能となった。この方法により各種のヒト細胞タンパク質の泳動パターンを求めた。各細胞の泳動パターンを重ね合わせることは存在量の多いタンパク質については可能であるが、存在量が少なくスポットの異同の判定が困難なスポットが大多数であり、タンパク質スポットの標準化のためにはHeLa細胞の抽出タンパク質を混合した試料を同時に求めて、HeLa細胞を介して各種細胞の泳動パターンを比較するのが現実であることが分かった。今後は各種細胞の二次元電気泳動パターン自身をデータベース化して公開することを計画している。電気泳動によって分離されたタンパク質のゲル内酵素消化またはブロッティング膜へ転写後の膜内酵素消化によってN末端アミノ酸配列または内部配列を求めた。この方法によりHeLa細胞で約20個、マウスN18TG2細胞より約30個求めた。このようにして求めた配列を既存のタンパク質データベースを使用して相同性検索を行ったところ未知または既報のタンパク質に相同なタンパク質が見いだされた。今後はいっそう多くのタンパク質スポットの同定を推進すると共に、未知タンパク質の全長配列を求めることが重要である。
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