研究概要 |
Tリンパ球(T細胞)の抗原レセプター(TCR)は、α,β,γ,δ,εおよびζ鎖ホモダイマーの少なくとも6種類、7本のポリペプチドからなる。これら6種類のポリペプチド鎖は別々に合成され、小胞体(ER)で一定の順序で会合し、完全な複合体になったもののみがゴルジ体に移行し糖鎖の修飾などを受けた後、細胞表面に発現される。T細胞は胸腺でセレクションを受け、分化、成熟する。このセレクションは、未熟CD4^+CD8^+(DP)細胞でTCRを介するシグナル伝達によって行なわれていると考えられているが、このDP胸腺細胞では、TCRの細胞表面表現量が成熟T細胞に比べて非常に低い。申請者たちは、このTCR表現量の調節機構について解析している。マウス胸腺細胞から抗CD8抗体を用いたパニング法を使ってCD4^+CD8^+(DP)細胞を分離する。末梢成熟T細胞としては、脾臓などからナイロンウールカラムを用いて分離する。これらの細胞を、^<35>S-メチオニンでラベル(パルス)し、その後、正常培養液にもどしてさらに0〜6時間培養する。いわゆるパルス/チェイスの実験を行なう。細胞を可溶化した後、TCRの各コンポーネントに対する抗体を駆使し免疫沈降を行なう。TCRの各コンポーネントは一定の順序で会合するため7本の完全な複合体(αβγδεζζ)や、途中の2本(αβ)、3本(αβγ)、5本(αβγδε)の複合体を別々に分離することができる。この免疫沈降物を、二次元(非還元/還元)のSDS-PAGEに展開し、新しく合成された種々の段階の複合体の量を、DP細胞と末梢T細胞を用い解析する。平成5年度には、さらに、CD4トランスジェニックマウスを用いて、DP細胞の細胞表面CD4分子を架橋刺激して、CD4に会合したp56^<lck>チロシンキナーゼを活性化し、TCRタンパクの翻訳後の分解、会合、細胞の局在を調べ、CD4/p56^<lck>による翻訳後調節のメカニズムを解析した。その結果いわゆるドミナント・ネガティブ機構の存在を明らかにし発表した。
|