原発性胆汁性肝硬変(PBG)の肝局所におけるT細胞レパトアにつきRT-PCR SSCP法を用いて解析した。9例のPBC患者の生検肝組織および末梢血単核球を用いてT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖について検討を行った。PBC肝組織における検討では、PCR産物はほとんどのVβにおいて認められ、特定のVβを有するT細胞の集簇は認められなかった。さらにSSCPによる解析では、種々のVβにバンドが認められた。バンドの出現しているVβの種類とその数は症例間で異なり、特定のVβにおける偏りは認められなかった。しかし、Vβ6の頻度は他に比べやや高率であった。PBCの末梢血単核球でもほとんどのVβにおいてバンドが観察された。PBC肝組織中のTCRレパトアの解析より、PBC肝組織のT細胞クローンは特定のVβを有するT細胞に限定されておらず、症例によって種々の異なるクローンが集簇していることが示唆された。さらに蛍光標識したCβと各Vβprimerのrun off reactionさらに蛍光標識JβとCβprimerによるrun off reactionを行い、PCR産物を電気泳動で解析することによりTCRのVDJC profileの検討を加えた。VβとCβのPCRの解析では、RT-PCR SSCPの結果と同様にほとんどのVβにおいてPCR産物が認められ、泳動パターンから多数のクローンの集積が示唆された。さらにVβ-Jβのprimerを用いてVβ5およびVβ6についてVDJのprofileを検討すると、Vβ5では特定のJβのみが使用されていたが、単クローン性のT細胞ではなく、またVβ6では多数のJβが使用されていた。これらのことからPBC肝組織に特定のT細胞クローンのみが集積していることは否定的であった。TCRレパトアの検討結果より、Scheuer I期またはII期の早期のPBCにおいてもすでに多数のT細胞クローンが集積していることが明らかになった。このことからスーパー抗原などによる刺激は否定的である。クローンの多様性は、初期には限定された抗原に対する特定のT細胞クローンによる反応であったものが、病期の伸展に伴いクローンが多様化してくる可能性と、初期からmultipleな抗原に対しT細胞が反応している可能性とが考えられる。今後PBC肝組織よりのT細胞クローンの樹立、さらにより早期のPBC症例の検討などからこの点を解明していく必要がある。
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