研究課題/領域番号 |
05670773
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
御前 隆 京都大学, 医学研究科, 助手 (60181872)
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研究分担者 |
阪原 晴海 京都大学, 医学研究科, 講師 (10187031)
笠木 寛治 京都大学, 医学研究科, 助教授 (20115819)
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キーワード | 甲状腺癌 / サイログロブリン / 免疫シンチグラフィ |
研究概要 |
甲状腺癌の動物モデル作成をめざして2種類のヒトの腫瘍由来の細胞株を入手し、まずウサギおよびマウスの抗体を用いた免疫酵素染色によりサイログロブリン(Tg)の存在を検討した。UCLA腫瘍放射線科学講座から分与されたWRO82-1は何度試みても細胞内に全くTg抗原を検出できなかった。この間染色の陽性対象として用いた手術標本の初代培養細胞では常に明瞭な染色性が得られた。ドイツのDSM細胞供給センターから購入したB-CAPは通常の間接酵素抗体法では染色できなかったが、高感度の染色法(labeled streptavidin biotin method)を用いると一部の細胞にごく弱いTg抗原の反応を認めた。ヒト型モノクローナル抗体(VB5)による染色も試みたが有意な発色はみられなかった。さらにいずれの細胞もヒト線維芽細胞のマーカーに対する抗体に強陽性を示した。両細胞株とも樹立者の論文では免疫染色により明らかなTgの発現を確認したと報告されているが、今回の結果をみると継代培養中に癌細胞の脱分化が起こったか、あるいは樹立時に少数混入していた線維芽細胞が急激に増殖して本来の株細胞を駆逐してしまったものと考えられる。いずれにせよWRO82-1、B-CAPともTg抗原に対する免疫シンチグラフィのモデルとするには不適と判断した。また両細胞株の樹立法に準じて手術標本由来の癌細胞を長期培養したが、やはり継代とともにTg抗原を発現した細胞の割合が減り、代わって線維芽細胞のマーカーを持つ細胞が急速に増加した。以上分化機能を保持しながら安定して継代培養できる甲状腺癌細胞株の樹立・入手は現在のところ困難なことが判明し、動物モデルの作成には至らなかった。今後は他臓器由来の癌細胞株にTgの遺伝子を導入するなど分子生物学的な手法による新しい細胞株の開発が必要と考えられる。
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