研究概要 |
1.回転パノラマX線写真上の下顎骨下縁皮質骨厚(MCW)と第3腰椎海綿骨密度との関係を,44名の閉経後女性について検討した結果,有意な相関が示された(r=0.48,p<0.001)。また腰椎の骨粗鬆化により,腰椎の骨折が危惧される骨折危険群のMCWは0.28±0.08cmであり,非骨折危険群のMCW(0.38±0.08cm)と有意差を認めた。特にMCWが0.22cmを示す女性では,腰椎骨折の危険性が極めて高いことが予想された。これらのことから,パノラマX線写真を用いることにより,閉経後骨粗鬆症患者をより簡便に診断しうる可能性が示された。 2.(1)MCWと残存歯牙数との相関について,269人の健常人(男性99名,女性170名)で検討した結果,男性では相関を認めなかったが,閉経後女性で有意な相関を認めた。すなわち,閉経後女性の歯牙喪失は,全身骨粗鬆化に続く下顎骨皮質骨の骨量減少に起因する可能性が示唆された。(2)閉経後女性の歯牙喪失数により潜在的椎体骨折をsurveyし得るかどうかについて,37名の閉経後女性のパノラマX線写真と胸部側方X線写真を用いて検討した。その結果,残存歯牙数及び下顎骨歯槽骨吸収度について,胸椎骨折を有する女性と有しない女性の間で有意差を認めた。特に,無症状の潜在的胸椎骨折を有する女性の60%は無歯顎者であったが,骨折を有しない女性には僅か3%しか無歯顎者が見られなかった。このことから,残存歯牙数の少ない閉経後女性,特に無菌顎者は潜在的な椎体の骨折を有している可能性が高いことが明らかになった。ただし,歯牙喪失(抜歯)の時期(閉経前か後か)や歯牙喪失原因によっても指標としての有用性が異なると考えられることから,今後これらの因子を加えてより詳細に検討する予定である。
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