研究概要 |
1.発癌実験 川尻らの方法に準じ7週齢のDAラットの舌に1.0%DMBA溶液を搾過舌に、週3回塗布した。同動物を塗布開始後第15、17、19週後に屠殺し,舌を素早く凍結すると同時に,一部をパラフィン切片用に固定包理した.肉眼所見では,第15週ラット舌に浅い潰瘍を呈するくらいしか観察できなかった.光学顕微鏡学的には第15週ラット舌に(高い異形性)を示したのみで,川尻らの報告したように発癌までは至らなかった.この理由は動物種の違い(川尻らはハムスターを使用)によるものかもしれないと考えた.現在,同組織の凍結切片に対して昨年度報告したUB-17抗体などを用いて免除組織化学的に染色・解析中である.一方,UB-17抗体はラットの扁平上皮癌FF6に対して作成したモノクローナル抗体であるが,ヒトの組織とは交叉反応性を認めたものの,正常ウサギの舌には反応しなかった.ハムスターの重層扁平上皮に反応を示すかどうか検索していないが,川尻らが発癌実験に用いたハムスターに対して新たにモノクローナル抗体を作製する予定はない。 2.UB-17抗体の特性の解析 種々組織に対する交叉反応性は井上らとの共同研究で「ラット扁平上皮癌(FF6)に対するモノクローナル抗体(UB-17)を用いた免疫組織化学的検索」(日本口腔外科学会雑誌,39:1551,1994),「ラット扁平上皮癌の細胞表面抗原の解析」(解剖学雑誌69:241,1994)と言う演題名で既に発表した.またUB-17抗原の分子量の同定には現在も困難を極めており,電気泳動を行うとき使用するSDS,DOC処理や,界面活性剤のTween40,NP40処理などを行った後,FF6ホモジェネイトを抗原にしたドットブロット法で調べるとその抗原性が失われていた.一方、Folchの方法で解析すると、上層には抗原が保存されていることが明らかになった.現在も解析中である。
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