研究概要 |
今年度は継代維持可能なラット扁平上皮癌株FF-6を抗原に作製した,抗ラット扁平上皮癌モノクローナル抗体「UB17」の特性などを更に詳細に調べ,FF-6をラットの舌,あるいは口唇に移植した後,経時的に転移局所リンパ節の重量変化の推移,移植局所と転移巣における腫瘍の組織学的相違,UB-17抗体陽性細胞の変化などを観察した.またFF-6を抗原にUB-17抗体とは別のモノクローナル抗体を作製し,その特性の解析も行った. その結果,FF-6組織を細切し組織片50μg(腫瘍細胞約1x108個に相当)を移植した場合、舌への移植では1週間後に局所(浅頸)リンパ節の腫脹が認められ,リンパ節重量は漸増していった.組織学的には2週間後に低分化型扁平上皮癌として初めて認められたが,次第にその形態が変化し,4週後に癌真珠を含む高分化型腫瘍になっていった.またその頃に舌局所で腫瘍が増大し,ラットは食物摂取が不可能となった.一方,下唇中央へ移植した場合,4週間後に初めて浅頸リンパ節に腫瘍細胞が認められるようになった. 現在.FF-6腫瘍細胞を抗原に新たな扁平上皮癌特異モノクローナル抗体(仮称X-1〜4)作製を試みている.そのうちX-1抗体はFF-6特異性を示し,ラットの正常重層扁平上皮細胞やヒトの種々分化段階の扁平上皮癌細胞とも反応しない抗体であった.また同抗原は有機溶剤や熱に安定でパラフィン切片でも検出できる有用性が認められた.今後X-1抗原の分子量の同定,抗原の精製,アミノ酸配列の決定などを行い,更に遺伝子解析まで行えればヒトとのそれと比較し,臨床的にも有用と考えている.
|