研究概要 |
AAVベクターの試験管内構成法を開発するためには、AAVのパッケイジング細胞を樹立し、その細胞内でのウイルス形成機構を解明する事が不可欠である。そこで、パッケイジング・プラスミドとネオマイシン耐性遺伝子(neoR)を担う組換えAAVベクター・プラスミドとの両者を染色体に組み込んだHeLa細胞株を樹立した。この細胞株にアデノウイルス(Ad)を感染させると、ゲノムに組み込まれた組換えneoR-AAVが切り出され、パッケイジングされた。産生したAAVベクターの力価は、組み込まれた両者のプラスミドのコピー数に依存して上昇していた。この事より、この細胞株はin vivoパッケイジング細胞として使用可能であり、更にAAVベクターの大量産生系としても利用出来ると思われる。しかし、HeLa細胞と共にAAVベクターの産生に用いられる293細胞(AdのE1遺伝子がtransformされている)では、パッケイジング・プラスミド内のAAV非構造遺伝子がE1遺伝子産物によって影響を受ける為か、パッケイジング細胞株の樹立は困難であった。 野生型AAVの外殻蛋白質の全遺伝子(1.8kb,87kDa)は大腸菌用融合蛋白質発現ベクター(pMAL-c)では発現されなかった。そこで、C-末部の67kDaに対応する遺伝子を削除した発現ベクターを調製し、23kDaの外殻蛋白質をマルトース結合蛋白質との融合蛋白質として分離した。この23kDaの蛋白質は外殻を構成する3種の外殻蛋白質全てに含まれる為、これを抗原として、外殻蛋白質に対するウサギpolyclonal抗血清を作成した。 現在、樹立したパッケイジング細胞を用いて、ウイルス形成機構を検討中である。
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