試験管内構成法を開発するためには、AAVベクターのパッケイジング細胞の樹立する事、及び、その細胞内でのウイルス形成機構を解明する事が不可欠である。そこで、新しいパッケイジング細胞として、パッケイジング・プラスミドのみを染色体に組み込んだHeLa細胞株を樹立した。この細胞株にネオマイシン耐性遺伝子(neoR)を担う組換えAAVベクター・プラスミドをトランスフェクトしてゲノムに組み込み、さらに、アデノウイルス(Ad)を感染させると、ゲノムに組み込まれた組換えneoR-AAVが切り出され、パッケイジングされた。この事より、この細胞株はAAVベクターのin vivoパッケイジング細胞として使用可能であると思われる。 大腸菌用融合蛋白質発現系(pMAL-cベクター)にて、マルトース結合蛋白質との融合蛋白質として分離した23kDaの外殻蛋白質は外殻を構成する3種の蛋白質全てに含まれる為、これを抗原として作成するmonoclonal抗体はAAVベクターの免疫学的同定や分離に不可欠である。現在、monoclonal抗体を作成中である。また、試験管内構成系にてAAVベクターが作成された場合、反応系より選択的にAAVベクターを分離・濃縮する方法を確立した。硫酸セルロースは、ほぼ定量的にAAVベクターを吸着し、1M NaCl含有燐酸緩衝液で生物学的力価を保持したまま定量的に回収出来る事を確認した。この知見は力価の低いAAVベクターの分離・濃縮に重要である。さらに、生物学的力価の評価が短時間で容易に行えるβ-galactosidase遺伝子を担う組換えAAVベクター(β-gal-AAV)を作成する為、数種のプラスミドを調整し、現在これらを比較検討中である。
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