研究概要 |
本年度は,まず,平成5年度に試作した表層表現を用いた文章構造解析プログラムおよび文章改訂支援のためのユーザインタフェースを,論文作成の熟練者(博士後期学生,教官)および初心者(卒論学生)に使用してもらい,性能評価を行った.次に,同様の改訂作業を熟練者および初心者に手作業で行ってもらい,プログラムを利用した場合との比較を行った. これらの実験,調査結果から,初心者の文章は,1文当りの最大語数・文字数が熟練者のものに比べかなり大きい,並列などのあいまい接続表現・関係が比較的多い,1文1段落の場合説明が不足していることが多いことが分った.また,熟練者による改訂作業は早期の稿であるほど接続関係に注目していることが分った.改訂実験からは,文章構造を表層表現に基づいて解析した結果をユーザに提示することで,ある程度の改訂支援が可能であることが分った. しかし,初心者は,実際に論旨の飛躍があるにもかかわらず,接続表現を用いることで一応の完結して見える文章を作成してしまう.そのため,接続表現タイプ毎の機能を調査分類した上で,接続関係にある文がその機能に合っているかどうかを調べることが必要である.また,初心者には,どのように改訂すべきかを指示しないと,現実問題として,より良い文章にはならない.改訂場所の指示だけでなく,改訂方法のヒントが必要であることも明かになった. 文レベルでの曖昧さを検出・指摘するプログラムおよび照応表現の解析アルゴリズムについては検討を行なったが,プログラムとして実現し,システムに組み込むには至らなかった.
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