研究概要 |
本研究の目的は、流域の都市化などの環境変化に伴う災害文化の衰退と育成方法を検討し、それを防災・減災に役立てるための基本的な条件を明らかにしようとするものである。その第1段階として、高知県をテストフィールドとして1990年より3年にわたってアンケート調査を実施し,その結果をまとめた.主要な成果を挙げると次の通りである。1.被災体験を聞く機会より話す機会が少ないという事実によって,災害文化は衰退していく.2.水害常襲地域での居住年数が長いと被災経験も豊富となり、災害への関心度が高まり、災害の知恵が保存される傾向にある。3.被災後,河川改修がすでに完了している地域では災害への安心度が高まり、逆に防災対策への関心度が低下し、その結果災害の知恵が衰退して行く傾向がある。4.水害常襲地帯での地価は、他の都市域のように経済の動向の直接的影響を受けにくく、しかも,他の地域に比べて地価は相当低いままで推移している。5.水害常襲地帯が近年都市化した地域では、流入した新住民は,当地で被災しておらず,そのため地域の災害への関心度が低く、自己中心の考え方をもっている場合が多いので、災害文化の伝承は困難であり、自主防災の必要性にも気づかない.本研究に関係して今後の課題としては,つぎのようなことが挙げられる。1.災害文化が衰退して行かないようにするために、地域特性に応じた対策が何であるかを求める必要がある。2.災害文化形成に関係する要因を定量的に求めるために、どのような調査を行えばよいのかという指針を明らかにする。
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