研究概要 |
本研究では、高知県における津波と洪水災害を取り上げ、それぞれに対してアンケート調査を行い,かつ三陸地方の津波の場合との比較から,防災の知恵としての災害文化が存在するかどうかをまず検討した.その結果、同じ津波災害で三陸地方と高知県では、前者に災害文化が形成されており、後者ではそれが衰退していることが見いだされた.それは、津波という低頻度災害ながらも被災経験の多さでは三陸地方が高知県より多く,これに比例しているといえる.そして、災害文化の具体事例として自主防災組織の組織率に現れており、その被災経験によって得られたまえぶれや言伝えなどを地域で共有して初めて文化として成り立つことがわかった.そして、災害文化を防災・減災に結びつけるために、マスメディアが発達した今日では、まず伝承の方法として、ビデオやテレビ番組、映画などの視覚に訴えることや、学校や行政の指導によって具体的に避難行動を繰り返すことによって災害を日常的なものに考えられるようにすることが最善であることがわかった.一方,高知県における津波と洪水災害では,後者が高頻度ということもあって,いまだ防災の知恵が残っているが,都市化の影響を受けて急速に衰退される傾向が見いだされた.このような点を踏まえて、自主防災組織が中心となって、住民を対象とした避難訓練や市民防災講座を開くことが必要であると指摘できた.本研究を基礎にして異種、同種の比較災害論を展開していくにあたり、災害文化の経年的な変化を追跡し,かつ複数地域で同じ災害事例と異種の災害事例について調査を行うことが今後の課題となると考えられた.
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