鉱質コルチコイドのアルドステロンは副腎球状層において特異的に合成される。ウシ副腎においては11β水酸化とアルドステロン合成の両活性をもつP-450(11β)が全細胞層に存在していることから、束・網状層におけるアルドステロン産生の抑制機構としてP-450(SCC)とP-450(11β)の特異的な相互作用が働いていることが、リポソーム再構成系の解析から知られている。この機構をミトコンドリアのレベルで明かにするために、ウシ副腎皮質の球状層及び束・網状層からミトコンドリア内膜を調製し、両細胞層間のP-450(SCC)とP-450(11β)の相互作用の差違について究明した。 1.P-450(SCC)抗体を用いて、P-450(11β)の活性に与える膜内在性P-450(SCC)の影響について解析した。デオキシコルチコステロン(DOC)からコルチコステロンを生成する11β水酸化活性は球状層に比べて束・網状層の方が抗体による阻害効果が大きい。一方、アルドステロン生成活性は抗体添加で束・網状層で著しい促進効果が見られるが、球状層では影響されなかった。 2.光反応性2価ヘテロ架橋試薬を用いて蛋白質間の架橋反応によるP-450(11β)とP-450(SCC)間の複合体の形成を解析した。架橋処理を行ったミトコンドリア内膜からP-450(SCC)抗体カラムにより複合体を単離したのち、電気泳動とイムノブロットにより両P-450を同定した。その結果、球状層に比べて束・網状層に多くの複合体の形成が観測された。以上、抗体阻害と架橋反応の実験から、両P-450の相互作用の程度が細胞層間で異なることがミトコンドリアのレベルで証明された。 3.リポソーム再構成系を用いて、P-450(SCC)の共存によって、代謝中間体のコルチコステロンがP-450(11β)から遊離し、DOCからアルドステロン生成の連続反応が遮断される機構を反応速度論的に解析している。
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