ヒト高ヒスチジン糖タンパク質(HRG)のcDNAをプローブとしてヒト遺伝子ライブラリーをスクリーンニングし、HRG遺伝子を単離、その全塩基配列(約15.5キロベース)を決定した。その結果、HRG遺伝子は、従来考えていた9つのエキソンではなく7つのエキソンと6つのイントロンから構成されている事が明かとなった。報告されているcDNA5'非翻訳領域の大部分がcDNAクローニング時のアーティファクトである事が示唆されたので、cDNAのクローニングを再度試みたが、購入したcDNAライブラリーの質が悪く、正しいクローンはまだ得られていない。本研究の目的は、HRG遺伝子の発現調節の観点からHRGの生理的機能を推測しようとするものであり、決定した5'非翻訳領域約2キロベースの塩基配列を、報告されている他の凝固・線溶系のタンパク質の遺伝子のものと比較的検討したが、顕著な相同性は今のところ認められず、協調して発現が制御されているものは無いらしい。しかし、5'非翻訳領域にし、種々の普遍的な転写因子や、肝臓特異的発現を制御している肝特異的転写因子、HNF-1やHNF-4が認識すると考えられる塩基配列の存在が確認された。現在、5'非翻訳領域を挿入したCATベクターの構築を終え、培養細胞を用いたCAT解析により、HRG遺伝子の発現調節機構を詳細に検討する準備を進めている。また、オランダのグループがPCRを基にイントロン6にGAリピートの長さが異なる遺伝的多型が存在する事を報告したが、本研究でも、2種類のライブラリーから得られた4つのクローンの塩基配列を解析した結果、GTおよびGAの繰り返し単位数が異なるものがある事が確認された。
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