研究概要 |
ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRG)のcDNAをプローブとしてヒト遺伝子ライブラリーをスクリーニングし、得られたクローンの塩基配列(15,499bp)を決定した。HRG遺伝子は、7つのエキソンと6つのイントロンから成ることが明らかとなった。各イントロン5'端はGT、3'端はAGであった。報告されているヒトHRGcDNAの5'端約100bpが、酵母ミトコンドリアDNAの一部分と完全に一致する事が解り、真のcDNAの5'端を調べるため、cDNAのスクリーニングからやり直したが、HRG遺伝子の転写開始点は特定できなかった。HRG発現の調節機構を解析するために、遺伝子の推定転写開始位置から上流約1kbの範囲で、種々の長さDNA断片を調製、CAT発現ベクターに組み込み、ヒト肝癌由来の細胞系にエレクトロポレーション装置を用いて形質導入した。48時間の培養後、細胞抽出液には、CAT活性の発現は殆ど認められなかった。そこで、組み込んだ遺伝子の発現を促進できるSV40のエンハンサー配列を含んだCAT発現ベクターを用い同様の解析を行った。その結果、転写開始点より上流145bpではCATの発現が認められるのに対し、57bpでは発現が認められず、この間にHRG発現に必須の配列が存在する事がわかった。100bp付近と140bp付近にそれぞれ肝臓特異的発現を制御している転写因子、HNF-4とHNF-1が認識する塩基配列が存在し、これらがHRGの発現に関与している事が示唆された。一方、生理的条件下ではHRGがどのようなタンパク質と相互作用しているかを調べるために、血漿そのままを用い、官能基間の長さの異なるEDC、DMA、DSPという3つの化学的架橋試薬を用いて架橋実験を試みたが、架橋産物は検出できなかった。
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