平成5年度の課題は、神経突起の伸展と分化に伴う微小管構成タンパク質チューブリンとMAPsの発現と翻訳後修飾の制御であった。このうち、本補助金で購入した等電点電気泳動(IEF)解析システムを使用するチューブリンのアイソフォームの分析と翻訳後修飾の研究に特に重点を置いた。まず、IEFとアイソタイプおよび翻訳後修飾部位特異的モノクローナル抗体をもちいたイムノブロットにより、アイソフォームを分析する系を確立した。次に、ラット発達脳にこの分析系を適用して、alpha-チューブリンの翻訳後修飾が神経突起の伸展や微小管の動的性質と関連が深いこと、beta-チューブリンの翻訳後修飾は神経突起の伸展ではなく成熟と関連することを見いだいた。さらに、コイ微小管を免疫原として作製したモノクローナル抗体K9が、alpha-、beta-チューブリンに共通にみられる翻訳後修飾部位を認識すること、神経突起の伸展と成熟の研究に有用であること、ポリグルタミン酸化部位などの既知のものとは異なる新しい翻訳後修飾部位と反応することなどを明らかにした。この研究の際、モノクローナル抗体E3B8のエピトープが全alpha-チューブリンアイソタイプに共通の432-452のアミノ酸配列領域に存在すること、E6B6のエピトープがbeta_<III>と他のbeta-チューブリンアイソタイプとの配列が異なる領域76-105に存在することも明らかにした。また、PC12細胞の表面抗原が未変性に状態で免疫し、生細胞と強く反応するモノクローナル抗体を効率的に作製する系を開発した。この方法により、突起伸展後に著しく増加する表面抗原を認識する抗体などが得られた。このことは、神経突起の伸展と成熟を促進するモノクローナル抗体を作製するという平成6年度の課題を遂行する上で基礎となるものである。
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