研究概要 |
平成5年度においては、等電点電気泳動(IEF)と抗チューブリンモノクローナル抗体をもちいた翻訳後修飾解析システムを確立し、α-、β-チューブリンの翻訳後修飾がそれぞれ、神経突起の伸展とシナプス形成後の樹状突起の成熟に関連することを明らかにした。平成6年度は、神経栄養因子を模倣するモノクローナル抗体を作製し、その作用機構を調べることに重点を置いた。前日にアジュバントを注射したマウスの足蹠に、PC12細胞の生細胞を免疫する方法を開発した。生細胞の表面と反応する抗体の産生の割合を、各培養細胞をそのままアジュバントと混合したものを免疫した場合と比較したところ、前者が約50%であるのに対し、後者は約10%程度であった。この結果から明らかなように、この方法は生細胞表面と反応する抗体の作製に極めて有効であった。得られた細胞表面抗体の中に、PC12細胞に対して神経成長因子(NGF)と同様に、突起伸展活性を有する抗体2E11が存在した。精製抗体10μg/mlで、その活性はほぼ極大に達し、NGFと同様に、この抗体の添加によりニューロフィラメントタンパク質(NF-L,NF-M)、βIII-チューブリンなどの神経細胞特異的細胞骨格タンパク質の発現の増加が認められた。以上のことは、この抗体が細胞分化のシグナル分子の代わりとして使用できることを示している。この抗体が認識する抗原分子についてを現在検討中であるが、GPI-アンカー分子の1つであることが明らかにされた。
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