研究概要 |
外来遺伝子を直接受精卵前核にマイクロインジェクションして作製されるトランスジェニックマウスは、実験動物学の分野のみならず広く医学生物学の分野で欠くことのできない研究手段となっている。しかしながら、注入された外来遺伝子断片がどのようにマウス染色体上に組み込なれるかに関する知見は少ない。そこで我々は挿入された外来DNAの組み込み状況について検討した。まず、互いにオーバーラップしない通常の遺伝子断片として、カルモジュリン遺伝子II型のプロモーター領域294bpにレポーター遺伝子としてlacZを繋ぎ、さらにその下流にSV40のスプライシング領域およびpolyAサイトを結合したミニジーンpW294galを構築した。オーバーラップを有する遺伝子断片として、ヒトパピローマウイルス16型DNA全配列の1.4倍の長さを持つDNA断片HPV16x1,4を構築した。これらをマイクロインジェクションし、得られたトランスジェニックマウスの遺伝子組み込み状況を検索した。導入遺伝子同志の結合部位を囲む領域の塩基配列を決定した結果、Pw294galでは数塩基の欠失や置換が観察され、HPV16x1.4ではオーバーラップ部位での相同組換えと数塩基の置換が見られたが、遺伝子の発現に影響する程の大きな欠落等は検出されなかった。以上の成績から、複数のオーバーラップを有するDNA断片をマイクロインジェクションすることにより、相同組換えを起し挿入された外来遺伝子は、長大ない遺伝子に構成される可能性が強く示唆された。
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