本研究は、まったく新しい構想の走行装置を検証しようとするもので、軸をもたない大きな球を3個の駆動ローラにより転動させるという駆動ユニットを、最低3個配して車体の支持・推進システムを構成するものである。駆動ユニットには、バスケット・ボールとベルト・コンベア用のギヤード・モータ内蔵のローラ(38φ、周速度12cm/s)を用いた。 駆動ユニット3基により車両を試作し、その走行性を検討した。直進走行時は全てのユニットの転動方向を同一に、ピボット・ターン時は、いずれか1つのユニットを停止し他の2基を所定の方向に転動させて行う。 進行方向に対し斜めになる2本のローラが球に乗り上げるようになる方向に回転するとき、通常は球が2本のローラの間でつりあって転動しているが、ときとして球が外れる(他方のローラが球に乗り上がる)ことがしばしば生じた。また、反対方向では球が外れることはなかったが、前者の方向に比べ、蛇行は大きかった。これらのことは、駆動ユニット単体による室内での定置実験の結果(前年度)と一致する。 球が離れることの原因を解明するため、駆動ローラのトルクとローラに働く法線反力を計測した。接触状態が振動的に変動しそれが減衰しなかったとき外れる。斜めに配置されたローラと球とはローラの軸方向に滑りが生じているので本質的に不安定性があるわけであるが、ユニット単体ではそのことは脱球に至るほどの影響はないものとわかる。車両を支持する複数のユニット間の干渉が原因であることが判明した。
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