主要卵白タンパク質の腫瘍細胞に対する障害作用、ならびにロタウイルス(RV)及びニューキャッスル病ウイルス(NDV)に対する赤血球凝集阻害活性(HI)を測定した。前者の障害作用については、オボムチンに強い活性があると明らかにし、特にオボムチンの一つのサブユニトであるβ-サブユニットがその主体であるとした。一方後者については、オボトランスフェリン、オボアルブミン、オボムコイドにも活性がみられるものの、オボムチンが他の卵白タンパク質と比較して、RVに対しては1万倍以上、NDVに対しては100倍以上もの強い活性を発揮すると判明した。そこで、オボムチンの構造とRV及びNDVとの親和性をHI活性を指標として検討した。オボムチンのNDVに対するHI活性はpH9以上での処理、またはそのpHでの90〜100℃で加熱処理した場合において活性が減少した。オボムチンからのO-型糖鎖の遊離がその要因の一つであると示した。オボムチンに酵素及び化学処理を行うと活性が減少した。このことはタンパク質が何らかの活性発現に寄与していることを示している。ノイラミニダーゼ処理オボムチンによる活性試験の結果、オボムチンの両ウイルスに対する親和性にはシアル酸が必要であるが、一方ではRVに対してはシアル酸に依存しない中性糖鎖活性部位もあると認められた。オボムチン各サブユニットはRVに対して活性を示したが、その活性はオボムチンより低いものであった。一方NDVに対してはβ-サブユニットのみが活性を示し、その値はオボムチンより高いものであった。プロナーゼ処理して得たβ-サブユニットのフラグメントの構造解析の結果、β-サブユニットは糖鎖の多い領域(分子量約12万)2か所と糖鎖の少ない領域(分子量約5万)3か所からなる構造を推定した。以上の内容から、生物活性発現には比較的大きな粒子の分子構造と、複数個の糖鎖が必要であるとした。
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