研究概要 |
本研究では鶏卵卵白よりシアロ糖タンパク質(オボムチン、オボムコイド、オボフラボプロティン及びオボグリコプロテイン)を調製し、それぞれの腫瘍細胞・ウイルスに対する親和性を、前者ではSR-180,MH134などに対する細胞増殖抑制効果から、後者ではロタウイルス、ニューキャッスル病ウイルスなどに対する赤血球凝集阻害効果から比較検討した。その結果、両者に対してオボムチンが特異的に親和性が高いと分かった。そこで、超音波処理あるいは酵素処理したオボムチンよりサブユニットであるα-オボムチン(粒子量18万)とβ-オボムチン(粒子量40万)を調整し、それぞれの前述の親和性を測定し、後者がその活性の中心であると明らかにした。さらに、このβ-オボムチンをプロナーゼ処理して得たフラグメントをイオン交換・ゲル瀘過カラムクロマトグラフィーにて分画し、活性測定と平行して構造を解析した。その結果、β-オボムチンは糖鎖の多い領域(分子量約12万、0-型糖鎖を主体とする)2個と糖鎖の少ない領域(分子量約5万、N-型糖鎖を主体とする)3個から構成されており、活性発現には糖鎖の多い部分が関与しているとした。ノイラミダーゼ処理すると親和性が低下することから、オボムチンにおけるシアル酸の存在が活性発現に必要であるが、ウイルスの種類によってはシアル酸に依存しない中性糖鎖も親和性に関与しているとした。さらにはタンパク分解酵素処理、あるいは-S-S-還元処理を施すと親和性が低下することから、活性発現には単純に糖鎖のみならず、比較的大きなペプチドに結合した複数個の糖鎖が必要であるとした。結局生物活性情報として、タンパク質部分の構造、シアル酸に結合している中性糖の種類及び結合様式、並びに糖タンパク質全体の構造及び分子量などが結合したものであるとした。
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