研究概要 |
臨床的検討 1)乳癌組織中のカルパインの量、カルパインの内在性インヒビターであるカルパスタチン量を乳癌症例約250例で測定した。カルパインは、その活性を測定する方法を確立した。カルパスタチンは、そのカルパイン阻害活性と抗原量を測定した。 2)カルパイン量、カルパスタチン量が乳癌患者の予後予測因子になるかについては、再発例でカルパイン活性が低いことが判明し、現在統計処理を行っている。 基礎的検討 1)ER陽性乳癌細胞株をE2存在下で培養し、種々の濃度のカルペプチンを添加し増殖の阻害を調べたところ、カルペプチンは、E2存在下で濃度依存性に増殖を阻害した。 2)培養細胞上清の種々の細胞増殖因子(IGF,TGFα)やエストロゲン依存性の蛋白であるPgR,PS2を測定したところ、PgRの産生にカルペプチンは影響を与えなかった。またIGF,TGFαなどのエストロゲン依存性に分泌される増殖因子に対する影響を調べたところ、カルペプチンは、その分泌には影響を及ぼさなかった。 3)カルペプチンのE2のERへの結合の直接の阻害の有無を調べたところその直接阻害は認められなかった。 4)IGF,TGFαなどの増殖因子がMCF-7への結合をカルペプチンが阻害するかを調べたところ、その阻害は認めなかった。 以上からカルペプチンは、既存のホルモン療法剤とは異なったメカニズムを有する薬剤であることが明らかにされた。
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