顎骨は他の骨に比べ特異的な骨組織であり、特に歯牙喪失に伴う変化は著しく、無歯顎堤は萎縮する。その原因として血液供給体系の変化や咀嚼力による刺激の欠如などの環境の変化が考えられる。我々は顎骨あるいは歯糟骨の性状について、補綴学的観点から研究するため犬を用いた実験系を確立し、抜歯後3ヶ月経過した無歯顎堤に咬合力負担条件の異なる義歯を装着し、それぞれの義歯床下の歯糟骨の変化の相違を明らかにしてきた。しかしながら、無歯顎堤の骨動態については十分明らかにされていないのが実情である。一方、高年齢化社会ぬおいて深刻な問題である骨粗鬆症の一つに閉経後の卵巣機能低下によるエストロゲン欠乏が原因とされているものがあるがこのような全身的因子が無歯顎堤の骨動態に及ぼす影響についても明らかにされていない。以上のような観点から無歯顎堤の骨動態を明らかにすることを計画した。5〜7才半の雌ビ-グル犬を4頭用いて、OVX(卵巣摘出術)群とIntact群に分け両側下顎小臼歯(P1〜P4)を抜去した。OVX群については卵巣摘出術を行って6週後に抜歯し、抜歯後12週間飼育し、Intact群については抜歯のみを行い抜歯後12週間飼育した。また骨動態を観察するために屠殺16日前と8日前に塩酸テトライクリンとカルセインを腹腔内投与した。屠殺後、非脱灰標本作製のため、軟組織を除去し10%中性ホルマリンにて固定し、類骨と石灰化骨の区別のためVillanueva bone stainで染色し、アルコール上昇系列にて脱水し、現在ポリエステル樹脂に包埋中である。今後、研磨標本作製し、骨形能計測をParfitらの方法に準じ、静的パラメータとして骨量及び類骨量を、動的パラメーターとして骨形成の時間的要素を含む石灰化速度を捉えるためにコンピューターとデジタイザーを用い画像解析を行う予定である。
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