研究概要 |
1)主要装置であるガス検出器(MSTPC)の改造を行った。これまでは増幅機構に通常のアノードワイヤーを用い、gating gridを装備して有効トリガーのあった時のみ増幅を行い、40kHzまでは安定に作動させてきた。今回増幅機構にGEMを用い(GEM-MSTPC)、より高い計数率での測定を可能とし、又カソードを細分化することにより、より高い位置分解能を得る事を目的としている。検出器の製作は完了し、性能評価を行っている。He(90%)+CH4(10%)とHe(70%)+CO2(30%)の二種類のガスに対して印加電圧を変えながら増幅度を測定した結果、GEMは通常の3段は必要なく1段で充分な増幅度が得られることがわかった。今後、計数率による増幅度の変化や位置分解能を調べ、ビームを用いたテストを行っていく。 2)原研タンデム加速器を用いた天体核反応率の測定を引き続き行っており、^8Liによる荷電粒子放出反応、及び^<12>B(α,n)反応を広い入射エネルギー範囲で測定した。特に、^8Li(d,t)反応の実験値は理論的予測に比べて約10倍、又^<12>B(α,n)反応は約2倍大きいことがわかり、超新星爆発時のr過程ネットワーク計算に新たな入力情報を与えた。 3)新しいGEM-MSTPCと高エネルギー加速器研究機構のTRIAC加速装置を用いて、^8Li(α,n)反応を更に精度良く測定するための実験simulationを行った。これまでの測定方法に比べ、エネルギー精度で数倍、統計精度で10倍の結果を得る見通しができ、TRIACでの実験として提案し、実験評価委員会で採択された。実験は来年度から開始する。
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