研究概要 |
本研究は,いずれも富栄養化が問題となっているという意味では同じであるがその汚染源が異なると考えられる高知県下の二つの内湾,すなわち浦ノ内湾と浦戸湾において,これまでほとんど調べられてこなかった重金属による汚染状況を明らかにし,有用微生物を用いたその浄化対策を考えることを目的としている.両湾における底泥中の重金属(Zn・Pb・Cu)の分布状況を調べ,その変動要因および汚染原因との関連について調べた.その結果,Znは,主として魚類養殖の給餌により富栄養化した浦ノ内湾よりも生活・産業廃水が主たる汚濁要因の浦戸湾において高い値を示した.一方Pbは,船が多数停泊する港湾部でかつ周辺に工場が多く位置している浦戸湾の測点で特に高いことが分かった.それに対しCuは,浦ノ内湾中央部の魚類養殖の盛んな測点で非常に高いことが分かった.浦戸湾におけるZnの濃度は東京湾と同程度,またCuやPbの濃度は東京湾や大阪湾よりむしろ高いことが分かった.大都会とは離れた高知県下の内湾底泥においても,重金属の蓄積が進行しており,しかもその汚濁の原因によって高濃度に分布している重金属の種類が異なることが分かった.また重金属の分布は,底層の溶存酸素濃度やその他の環境要因の変動と関連して変動している可能性が示唆された. ところでこのような重金属の多くは,通常無機態より有機態のもので毒性がより強いことが知られている.このため,底泥から重金属の毒性に対して耐性を示し,かつ有機態重金属を分解・無機化する細菌株の分離を現在試みているところである.最終年度の平成19年度では,有機態重金属を分解・無機化し毒性を軽減する微生物の分離とその効果について,主に室内実験により明らかにする予定である.
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