研究概要 |
汚染の原因が異なると考えられる高知県の二つの閉鎖的内湾,すなわち魚類養殖による富栄養化が主な原因と考えられる浦ノ内湾と生活排水が主たる汚濁原因と考えられる浦戸湾において,Zn・Cu・Pbの分布および変動を調べ,その分布や変動をもたらす要因について考察するとともに,これら重金属の毒性に対して耐性を示し,さらに毒性の強い有機態重金属を分解・無機化する細菌株を現場から分離することを目的とした. 2006年から2007年にかけて観測された各測点におけるZn濃度は,浦ノ内湾で平均130〜140μg/g,浦戸湾で平均170〜180μg/gであり,浦ノ内湾に比べて浦戸湾でかなり高い値を示した.Cuは浦ノ内湾の養殖漁場付近で平均70〜95μg/gであったのに対し,湾口部の測点では50μg/g,浦戸湾でもせいぜい60〜70μg/gであり,魚類養殖の影響が大きいことが明らかとなった.Pbは浦ノ内湾の養殖漁場では50〜60μg/g,湾口部では46μg/gであったのに対し,浦戸湾では60〜90μg/gと高値を示すことが明らかとなった.以上の結果から,浦戸湾の高いZnやPb濃度は付近にある造船所や高知市等の都市部からの生活排水が長年にわたって堆積した結果であること,一方浦ノ内湾における高いCu濃度は魚類養殖に用いられる餌に比較的高濃度に含まれているCuがやはり長期間にわたって堆積した結果であることが推察された.また塩酸で容易に遊離してくる"易分解性画分"は,Znで約56%,Cuで約40%と高い値を示したことから,同環境に生息する生物への影響が懸念された. このような内湾環境の底泥から,高濃度の重金属に対して耐性を持つ細菌株が2株分離された.これらは,それぞれ863ug/gのZnおよび493ug/gのCuに対しても耐性を示し,増殖可能な細菌であることが明らかとなった.このような細菌株を用いてZnやCuの底泥からの除去の可能性が示唆された.
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