研究概要 |
本年度は,日本の郊外を象徴する存在としてのニュータウンの現状を把握すべく,現地調査および住民への聞き取り調査((1))を行い,さらにランドスケープおよび都市構造の変容を定量的に評価するために必要となる統計資料の収集((2))を行った.(1)については,多摩ニュータウンをケーススタディ地域として選定し,住民や,住民によって組織されるNPO法人に対して複数回の聞き取り調査を行い,ランドスケープおよび都市構造の変容が当事者である住民にどのように受け止められているのかを把握した.(2)については,特に都市構造の変容を解析する上で重要となる社会的なデータとして,総務省が発行する日本統計年鑑から人口に関するデータを収集し,空間的な変容を解析するデータとして1950年代から現在に至るまでの航空写真を入手した. 以上,(1),(2)より得られた情報を整理し,目本の郊外都市としての多摩ニュータウンにおける動態を概括的に捉えた.その結果,人口減少や高齢化に伴う都市の縮小により,多摩ニュータウンのような郊外部の都市は撤収を余儀なくされるなか,未利用地の増加などによるランドスケープの無秩序な荒廃が懸念されることを指摘した. また,以上の研究成果についてはフランスの都市研究ジャーナル誌「Les Annales de la recherche urbaine」に投稿した. 次年度は今年度に得た情報やデータを基に解析を進めることによって,ランドスケープおよび都市構造の変容を定量的に示し,フランスの都市についても同様の手順で解析を進めることによって,日仏間の比較を行う予定である.
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