研究概要 |
赤道域電離圏において究明されるべき問題の1つとして、近年、理論、及びボトムサイドサウンダーデータ解析によりその存在が見出された,F3層が挙げられる。このF3層は時間発展の結果、電離圏トップサイドにもその影響が現れると考えられるが、人工衛星搭載トップサイドサウンダー観測データ解析の結果、トップサイドにおいても赤道域電離圏特有の現象として、Ionization ledgeという現象が存在することが報告されている。これらの現象は、F2層より高高度の領域にプラズマ密度のエンハンスした領域が形成されるというものであるが、赤道域電離圏のボトムサイド、及びトップサイドにおいてそれぞれ独立に見出されたこれらの現象が、一連の時間発展の中での同一の現象であるとすると、現象のボトムサイドからトップサイドへいたる時間発展の詳細な解明が必要である。本研究では、これらの現象を中心に、赤道域電離圏の電場構造、プラズマと中性大気風の相互作用といった問題の解明を目的として観測データの解析、及びシミュレーションによる研究を進めている。本年度は、主にNICTによって運用されている多点ボトムサイドサウンダー観測(SEALION)データの解析を行った。データ解析の結果、F3層の出現率の季節依存性、持続時間、時間発展の様子は磁気赤道近傍と低緯度電離圏において異なる事が明らかとなり、これらの解析結果、及びSAMI2モデル(Huba et al.,2000)を用いたモデル計算結果からこれまで言われてきた以上にプラズマの沿磁力線拡散のF3層に及ぼす影響が大きいことが示唆された。これらの成果は既に国内外の学会において報告し、解析結果については投稿論文としてまとめ、受理されている。
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