研究テーマ"Green関数を導入したフラグメント分枝軌道法によるDNA電荷移動機構の解明"について、初年度である17年度では計算手法の確立を目指し、Green関数法を用いた電気伝導計算方法の開発を行った。 開発した手法を用いて、デンドリマーなどの分枝状の構造を持つ分子に関して計算を行い、その伝導度を求めた。これはDNAの計算においてはその立体構造決定及び分子サイズの問題があり、現状では計算モデルとして適さないと判断したためである。また、開発した手法はmulti-terminalな系の計算が可能であり、この機能を有効利用するためにさしあたりのテーマとして選定した。 まず3種類のデンドリマー分子を用意し、各々の第1〜第4世代の構造を用意した。この構造については分子力学計算で求めた。このデンドリマーのコア部分及び枝部分に金電極を接合したモデルを作成した。電極はコアとデンドリマーの世代に応じて数を増やすようにした。それらの構造に対して伝導度の計算を行い、電流-電圧特性を求めた。 結果的に、計算した各デンドリマーにおいて物理的に有用なTransmissionの値は得られなかったが、ドーピングを行うことによって有効なTransmissionが得られることがわかった。また、multi-terminalの効果として、枝→枝の電流がコアの、枝→コアの電流が別の枝の影響で変化することがわかった。 これについては、分子構造討論会及びPasifichemの両学会にて発表を行った。
|