フラーレン内部の中空空間に異原子を閉じ込めた内包フラーレンの中でも、スピンを有する常磁性金属内包フラーレンは、空気中で安定に存在することから、多分野からナノ磁性体の構築素子として注目を集めている。 本研究は、1)La@C_<82>(Ad)付加体の大量合成並びに熱異性化を試み、それらの電子的特性を解明し、さらに2)詳細な構造解析を目的として、各々のアニオン体の合成およびNMR測定を行うことを目的としている。本年度は、La@C_<82>(Ad)を大量に合成する目的で、まずはじめにLa内包フラーレンの大量合成・単離を行った。具体的には、La@C_<82>を多段階HPLC法により分離・精製した。La@C_<82>とアダマンチリデンとの光反応により、La@C_<82>(Ad)を大量に合成した。得られたLa@C_<82>(Ad)-Iの熱異性化を試み、高い変換効率で異性体-IIを得た。異性体I&IIの構造についての知見を得るために、電解法により各々のアニオン体を合成した。得られたアニオン体は反磁性体であり、吸収スペクトルおよびNMR測定を行った。^<13>CNMR測定より、各々の誘導体の炭素ケージの対称性を明らかにした。本研究成果は、開殻構造を有する誘導体を電気化学手法により閉殻構造のイオン種に分子変換できることを示したものでもあり、その結果、誘導体の安定性の向上とNMRによる構造決定へと繋がった。今後、これらの配向制御による自己組織化を試み、フラーレン間に働く磁気的相互作用を明らかにし、単分子メモリーやナノデバイスなどの機能性炭素材料への展開を試みたい。
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