研究課題
本年度の成果として最も大きなものは、特別研究員として採用されてから2年間かけて行ってきたことを、博士論文としてまとめたことである。日本列島には、約700点という高密度な傾斜計観測網が展開されており、昨年度の研究で、この記録を使用してレシーバ関数を作成するということを行った。本年度では、この記録を用いてマイグレーションという手法を適用して、日本列島下の上部マントル構造のイメージングを行った。結果として、上部マントルに存在する410,660km不連続面を明瞭に検出し、沈み込む太平洋スラブの上面・下面も検出した。ここまでは、昨年度まで用いていた手法での結果とも調和的である。昨年度の結果よりも向上した点として、下部マントルに突き抜けている太平洋スラブが水平方向に変化していることが挙げられる。近年の地震波トモグラフィーの研究で、日本列島の下では太平洋スラブが660km不連続面を突き抜けたあたりで滞留し、北側では660km不連続面の上で滞留している可能性が示唆されていた。しかし、地震波トモグラフィーでは、マントル遷移層の深さでの解像度が低いので、これらの結果を他の手法で保証する必要があった。本研究では、この地震波トモグラフィーで得られた結果と非常に調和的な結果が得られ、地震波トモグラフィーの結果を保証することができたと考えられる。これらの内容を博士論文としてまとめ提出した。今後は、合成波形を作成してこれらの結果の検証を行い、また、速度構造についても言及していく予定である。これによって、上部マントルの熱学的構造や岩石学的構造なども明らかになっていくことが期待される。
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