平成17年7月に、日本で5番目となるX線天文衛星「すざく」の打ち上げに成功した。私は、「すざく」に搭載されるX線CCDカメラ「XIS」の開発に取り組み、打ち上げまでの期間は主にその地上較正試験を、そして打ち上げ後はその機上較正試験を担当してきた。具体的には地上試験のデータや既知の天体の観測データをもとに検出効率やゲイン、応答関数を正確に評価し、観測スペクトルから得られる情報の精度を向上させてきた。また、打ち上げ前から「すざく」の特徴と謳われてきたバックグラウンドの低さ、安定性を実証し、バックグラウンドレベルを極限まで低く抑える解析法を決定する作業を行ってきた。これらの較正試験の結果は、今後「すざく」のデータ解析に携わる方々にとって非常に有用なものとなる。 これに平衡して、「すざく」XISの観測によって得られたデータの解析も行ってきた。「すざく」の優れたエネルギー分解能と検出効率を利用し、超新星残骸SN1006から高温プラズマと非熱的粒子の空間的な切り分けに成功、それぞれの成分のマッピングを行い、両者の分布が異なることを実証した。この結果は、熱的成分の温度や密度、平衡度、そして粒子加速の効率などが超新星残骸中での場所ごとに大きく異なることを示唆する。現在これら場所ごとの物理状態を定量化する作業を行っており、平成18年度中には論文にする予定である。 同様の解析をSN1006以外の超新星残骸についてもおこなっており、私の研究課題でもある、「超新星残骸のエネルギー非平衡と宇宙線加速」の普遍的な理解を追及している。
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