研究概要 |
本研究の最終年度のあたり,これまでの研究を総括することに重点をおいた。なかでも森林管理の今日的課題に研究のスポットをあてた。 アメリカでは木材関連企業が所有する森林(industrial forest)は,7,000万エーカーを上回り,国全体の森林面積の14%を占めるまでになっている。過去においては、森林を所有し経営するのは経済目的であり,つまり木材生産から利益を追求することにあった。1950-60年代のアメリカ経済が活况を呈した時代,企業は木材生産の保続原則に基づいて森林経営に当たり,もっぱら地域経済や地域社会を支えるものとして経済活動を展開していた。1970年代に入ると,この経済活動に起因するインパクトを木材企業がどのくらい配慮しているか,大衆の関心が高まった。多くの新語が大衆から提起された。バイオディバースティ,ハビタッツコンザ-ベーション,エコシステムマネージメント等など。以来,企業は大衆から提起される森林経営や木材生産加工に影響するような問題には積極的に対応するようになった。その核心になるのが,それまでの保続収穫林業(sustained-yield forestry)から保続可能な林業(sustainableforestry)への転換を確認したことであり,こうした動きがアメリカ林業・製紙連合会の傘下のメンバーによる合意のもとで,国全体の運動として展開されるようになったことである。そこでは保続可能な林業の基準原則と,そのガイドラインを定め,またメンバーには説明・償責(accountability)を明確にすることを要求している。また,この動きは木材関連企業NIPFに対する森林経営援助という形をとりながら,全国的な広がりになっている。
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