東アジア農村祭祀の比較研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06041098
• 研究機関: 学習院大学
• 研究代表者: 諏訪 春雄 学習院大学, 文学部, 教授 (60082921)
• 研究分担者: 依田 千百子 摂南大学, 国際言語文化学部, 教授 (20149149) ; 葉 漢鰲 学習院大学, 東洋文化研究所, 客員研究員 ; 竹内 房司 学習院大学, 文学部, 助教授 (30179618) ; 曾 紅 学習院大学, 東洋文化研究所, 客員研究員 ; 崔 吉城 中部大学, 国際関係学部, 教授 (80236794) ; 黄 強 学習院大学, 東洋文化研究所, 客員研究員 ; 川村 湊 法政大学, 教養学部, 教授 (70224855) ; 萱沼 紀子 作新学院女子短期大学, 文科, 教授
• キーワード: 農村祭祀 / 年中行事 / 日常生活 / 日韓中 / シャーマニズム / 男女シャーマン / 神 / 仏

研究概要

この調査研究は、最近の中国本土・台湾・韓国などの農村祭祀、ことにシャーマニズム系統の祭りにたいする研究の高まりに応じて、中国や韓国の研究者たちとの密接な協力態勢のもとに現地調査を実施し、その成果を日本各地の農村祭祀の研究成果と比較検討し、東アジアにおける共通の信仰圏と信仰形態の存在を確認し、その基層の上に築かれた日本民族の信仰のあり方をあきらかにすることを目的としている。ことに、中国における道士、憧子、馬々子、師公、道公などの男性シャーマン、売子、渡仙、仙婆などの女性シャーマン、台湾の道士やタンキ-などの男性シャーマン、韓国の女性シャーマンのムーダン、タンゴル、男性シャーマンのパクス-、日本の沖縄のノロ、ユタ、東北のイタコ、ゴミソなどの女性シャーマンの、それぞれの誕生と相互影響関係の解明を具体的なねらいとした。平成六年度は、三年計画の初年度として、中国の江蘇、浙江、雲南、広西チワン族自治区の四つの省の男女シャーマン、台湾の中部山岳地帯の苗栗県、新竹県の賽夏族の矮霊祭と男性シャーマンのタンキ-、韓国の慶尚南道、全羅南道、全羅北道の女性シャーマンのムーダンやタンゴル、日本の沖縄島知念村久高島のノロや根神を中心にいとなまれる夏祭りを現地調査した。その結果、あきらかになったことは、大別してつぎの二点にまとめられる。第一は、地球の年中行事のなかに組みこまれた祭りでは、神が神社に常住せず、祭りの時期に招かれて止まる形式と、神や仏が神社や寺院に常住する形式の二つに区分され、その両者において祭式の基本構造に類似性がみとめられたこと、第二は、季節を問わず、農村の人々の日常生活のなかにはいりこんで活動している男女シャーマンの、入巫体験、祈願形式、祭壇の飾り、祈願対象としての神仏などに、やはり顕著な一致点のみとめられたことである。この類似性の把握の深化拡大と理由の究明分析が今後の研究課題となる。

研究成果

• [文献書誌] 諏訪,春雄: "依代考-仮面・化粧・衣装の記号学-" 学習院大学東洋文化研究所調査研究報告. 41. 37-49 (1994)
• [文献書誌] 黄,強: "乞食に化身する来訪神" 学習院大学東洋文化研究所調査研究報告. 41. 51-66 (1994)
• [文献書誌] 曾,紅: "中国雲南省ハニ族の「ホスザ」と日本の「初穂祭」" 学習院大学東洋文化研究所調査研究報告. 41. 67-77 (1994)
• [文献書誌] 葉,漢鰲: "翁舞における十二月往来と中国の民俗思想" 学習院大学東洋文化研究所調査研究報告. 41. 25-36 (1994)
• [文献書誌] 武内,房司: "清末青蓮教帰根門派の展開" 学習院大学東洋文化研究所調査研究報告. 41. 79-95 (1994)
• [文献書誌] 武内,房司: "清末浙江の羅教系結社-霊山正派と覚性正宗派-" 学習院大学文学部研究年報. 41. 37-62 (1995)
• [文献書誌] 諏訪,春雄: "日中比較芸能史" 吉川弘文館, 372 (1994)
• [文献書誌] 諏訪,春雄: "折口信夫を読み直す" 講談社, 202 (1994)
• [文献書誌] 諏訪,春雄・川村,湊: "アジア稲作民の民俗と芸能" 雄山閣出版, 325 (1995)
• [文献書誌] 諏訪,春雄・川村,湊: "アジア山民海民の民俗と芸能" 雄山閣出版, 221 (1995)
• [文献書誌] 諏訪,春雄・川村,湊: "アジアの霊魂観" 雄山閣出版, 350(予定) (1995)
• [文献書誌] 崔,吉城: "恨の人類学" 平河出版社, 477 (1994)