研究分担者 |
池 春相 韓国, 全南大学校・人文科学大学, 教授
金 善豊 韓国, 中央大学校・文科大学, 教授
尹 成奎 中国, 北京師範大学・中文系, 講師
金 錦子 中国, 中央民族大学・中文系, 副教授
烏 丙安 中国, 遼寧大学・中文系, 教授
津波 高志 琉球大学, 法文学部, 教授 (90128489)
須藤 護 放送教育開発センター, 助教授 (70216480)
植野 弘子 茨城大学, 教養部, 助教授 (40183016)
朝倉 敏夫 国立民族学博物館, 第一研究部, 助教授 (40151021)
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研究概要 |
平成6年度の中国・吉林省延辺朝鮮族自治州に引きつづき,同7年度には7月31日〜9月5日の間,遼寧省内の朝鮮族村落3か所を選び,朝鮮族民族文化について国際共同調査を実施した。すなわち,(1)都市近郊農村として瀋陽市于洪区大興朝鮮族郷(新光村・西橋村・呉家荒村・興盛村),(2)農山村として新賓満族自治県旺清門朝鮮族自治鎮朝鮮族村,(3)農村として新規開村された寛甸満族自治県石湖溝郷宝山村(旧,宝山朝鮮族村)の3地区で,それぞれ郷・鎮・村として自治体をなし,かつ朝鮮族の特性を持つ村々であった。遼寧省では東北3省のうち朝鮮族の人口が最小で,他の地区に比して一段と漢族化(漢化)を進め,固有の民族性が薄弱であった。とりわけ中国における政治的・社会的な変革,たとえば1950年代から始まった土地改革,1966年から約10年間続いた文化大革命などに際して伝統的な民族文化は大打撃を受けた。衣食住など有形文化はもとより,村落・家族・親族などの社会構造や信仰・葬祭などの精神文化も変貌した。その1例が火葬の奨励と墓地の撤去にも現れ,今や韓国の習俗とは大差が生じていた。瀋陽市の大興郷では,土葬は全廃され.墓地は完全に摘廃され,火葬骨を河に投ずる「散骨葬」が普及していた。一方,文革後の1981年,旧陸軍演習場跡に成立した宝山村では,民族性の回復に努めていた。最近では,中央政府の開放・改革政策のもと,韓国との文化的・経済的交流を図り,朝鮮族文化村として自立を進めている。また各地でシャマン・風水師らが密かに復活し,旧習の再興を企てていることも目についた。このような伝統回帰の動きが,朝鮮族の民族性再確認にどのような影響をもたらすか注目される。平成7年12月には,中国・韓国から計5名の来日を得て,東京で共同研究会を開催し,両年度にわたる調査成果を比較・総括し,併せて明年度黒龍江省における調査計画・調査法の調整を図った。
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