研究課題
本年度は、インドネシア国東部のスラウェシ州およびマルク州において環境利用とその変容に関する現地調査を実施した。スラウェシ島でウジュンパンダンからメナドにいたる縦断調査をおこなった。マルク州では、アンボン島、サパルア島、セラム島などにおいて、同様な資源利用調査を実施した。それぞれの環境において、森林、水産、農業資源がどのような民族集団を通じて獲得され、さらに加工を施されて流通機構に乗るのかについて調査をおこなった。資源の種類によって自給用、近隣経済圏における交易・交換用となるもの、さらに国内の大都市や消費地向けのもの、海外輸出用のものがあり、それぞれの地域で複雑な資源利用がなされていることがあきらかになった。その場合、資源獲得領域で活動をおこなう個人の属する集団と生産物を加工・輸送する個人や集団とはけっして同一ではないことがわかった。とくにスラウェシ南部ではブギス人が、中部でもブギス人が商人として重要な役割を果たしていた。スラウェシ北部ではゴロンタロ人が重要であった。産物の種類により、森林部ではトラジャ、ジャワ、バリ、オラン・ワナ(森林住居の先住民)が森林資源獲得に大きな役割を果たしている。沿岸域ではバジャウ、ブギス、サンギル人が水産資源の獲得に重要な活動をおこなっている。輸出産物については、ブギス人やインドネシア・チャイニーズが商業的に重要な役割を担っている。しかも国際的な価格に応じて現地でもきめこまやかな対応があり、資源利用域における活動と流通機構が密接に連携していることがあきらかになった。さらにこの点を実証的、数量的に把握するための調査が今後の課題となった。
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