研究概要 |
本研究は,熱プラズマアークにおける「電極で生じる特有の現象」を明確にするために,プラズマと陰・陽極の間の熱・物質輸送について実験計測を行ない,理論的数値解析と比較することによって,プラズマ・電極系の物理を明らかにすることを目的としている.本年度においては,特に,直流アーク放電における陽極近傍の物理的状態を明らかにすることを目的として,アーク・陽極境界層を観察し,アーク電流を変化させた場合の境界層空間の温度・密度分布および電位分布を求めた. 低電流アークの場合,プローブ計測の結果から境界層において電子温度が上昇し,正の陽極降下が生じることが示された.分光計測の結果から境界層において電子密度が減少することが示された.また,その電子密度からLTEを仮定することにより電離温度を求め,境界層では電子温度とガスの温度が等しくないことが明らかにされた.さらに,陽極入熱測定の結果から境界層ではガスの温度が低いことが推察された. 一方,高電流アークの場合,プロープ計測の結果から境界層において電子温度はほとんど変化しないことが明らかにされ,負の陽極降下が存在することが示された。分光計測の結果から境界層の電子密度は低電流アークに比べてかなり高く,境界層においてほとんど変化しないことが示された.また,同様にLTEを仮定して電離温度を求めることにより,境界層では電子温度とガスの温度がほぼ等しいことが明らかにされた.さらに,陽極入熱測定の結果から境界層のガスの温度が低電流アークの場合よりも高いことが推察された. 以上,本年度の研究では,陽極近傍のガスの温度がアーク・陽極境界層の形態を決定し,そのガスの温度はアークの電流値によって決定されていることを結論づけた.
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