研究概要 |
本研究は,熱プラズマアークにおける「電極で生じる特有の現象」を明確にするために、プラズマと電極の間の熱・物質輸送について実験計測を行ない,理論的数値解析と比較することによって,プラズマ-電極系の物理を明らかにすることを目的としている.本年度においては,特に,プラズマ-陽極の境界層の定常状態を記述する数値解析モデルを開発した.このモデルは,従来,当グループで開発した1流体モデルではなく,電子のような軽粒子と,イオン,原子,分子のような重粒子の2流体の混合体としてプラズマを記述する2流体モデルである.これによって,プラズマの平衡状態,電極近傍の境界領域での熱・物質輸送がより正確に記述できることになる.本モデルでは,陽極領域を「シース」,「プレ・シース」,「境界層」の3つの領域で定義し,境界層域には連続の式,運動量保存式(ナビエ・ストークス方程式),エネルギー保存式から構成される2流体モデルを適用し,シースおよびプレ・シース域にはラングミュア・プローブ理論を適用した.計算の結果,境界層域では,電子温度と重粒子温度は陽極に近づくほど低下するが,その低下の割合が異なっているため陽極前面では双方の温度が大きく食い違っており,かなりの非平衡状態であることが示された.また,境界層中では,全ての条件において負の電界強度を示した.ここでの負の電界強度とは,陽極に近づくに連れて電位が低下する,いわゆる負の陽極降下である.しかし,陽極近傍での重粒子温度の増加とともに負の陽極降下が弱まることが示唆しされた.
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