全身性エリテマトーデスの多様性に関する分子病理学的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06404024
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 白井 俊一 順天堂大学, 医学部, 教授 (30115860)
• 研究分担者: 西村 裕之 桐蔭学園横浜大学, 工学部, 教授 (60189313) ; 鶴井 博理 順天堂大学, 医学部, 助手 (40217386) ; 広瀬 幸子 順天堂大学, 医学部, 助教授 (00127127)
• キーワード: 自己免疫疾患 / B-CLL / B1細胞 / マイクロサテライト解析 / MHCハプロタイプ / New Zealandマウス / SLE / 疾患感受性遺伝子

研究概要

従来からB細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)患者やその家族にSLEを含む自己免疫疾患が好発することが知られている。もともとB-CLLには家族集積性があり、また、人種差があるなど遺伝性癌の性格が強い。この点に関連して我々はNZWマウス系にB-CLLが自然発症すること、また、B-CLLと自己抗体産生細胞の前駆細胞がともにCD5^+B1細胞であることを発見した。このことは、B-CLLと自己免疫疾患との遺伝的相関の実体が、B1細胞の異常増殖、異常分化に関わる遺伝的機構にあることを示唆している。NZWマウス系はそれ自身自己免疫系ではないが、NZBやBXSB系マウスと交配したF1においてSLE病態を著名に増悪する修飾遺伝子を持っている。にもかかわらず、NZB(H-2^<d/d>)や(NZB x NZW)F1マウス(H-2^<d/z>)のH-2ハプロタイプをH-2^zホモに変換したcongenic系では自己免疫疾患が発症せず、替わりにB1細胞由来のB-CLLが発症した。しかし、同じH-2^zハプロタイプをホモに持つ非New ZealandマウスB10.NZWにはB-CLL発症しなかった。この事は、NZWやNZBマウスにはH-2^z連鎖遺伝子以外のB-CLL感受性遺伝子が存在していることを示している。Microsatellite解析によるprogeny検索の結果、第17染色体上のH-2^z連鎖遺伝子Bpal-1、第13染色体上のBpal-2,第17染色体上の非H-2連鎖Bpal-3の3個の感受性遺伝子が各々相加的に異常なB1細胞増殖に関わっていることが明らかとなった。H-2^z haplotypeのユニーク性は、これがH-2^<d/z>ヘテロの場合SLEを促進し、ホモ接合性の場合自己免疫疾患を制御しB-CLLを誘発するという点である。これらのマウスでは、B1細胞は増殖はするが分化は起こらない。このような分化を伴わない長命B1細胞はその増殖の過程で多階段の遺伝子変異を受け、B-CLLとなることが示唆される。SLEとB-CLLの発症が一個の遺伝子の違いに由来するという所見は、この両病態の遺伝的相関をよく説明する。

研究成果

• [文献書誌] Jiang,Y., Hirose,S., Hamano,Y., Kodera,S.: "Mapping of a gene for the increased susceptibility of B1 cells to Mott cell formation in murine autoimmune disease." J.Immunol.158. 992-997 (1997)
• [文献書誌] Hirose,S., Hamano,Y. & Shirai,T.: "Genetic factors predisposing to B-CLL and to autoimmune disease in spontaneous murine model." Leukemia. 11. 267-270 (1997)
• [文献書誌] Hirose,S., Yan,K., Abe,M., Jiang,Y.et al.: "Precursor B cells for autoantibody production in genomically Fas-intact autoimmune disease are not subject to Fas-mediated immune elimination." Proc.Natl.Acad.Sci,USA. 94. 9291-9295 (1997)
• [文献書誌] Haruta,K., Kobayashi,S., Hirose, S., Horiai,A.et.al.: "Monoclonal anticardiolipin antibodies from NZB x NZW F1 mouse react to thrombomodulin." J.Immunol.160. 253-258 (1998)
• [文献書誌] Hattori,S., Nishimura,H., Kato,M., Endo,N.et.al.: "L-selectin-specific autoantibodies in murine lupus : possible involvement in abnormal homing and polarization of CD4^+ T cell subsets." J.Immunol.in press.
• [文献書誌] Ishikawa,S., Akakura,S., Abe,M., Terashima,K.et.al.: "A subset of CD4^+ T cells expressing early activation antigen CD69 in murine lupus : Possible abnormal regulatory role for cytokine imbalance." J.Immunol.in press.