研究概要 |
平成8年度までの研究では、肺癌多発家系においてp53,K-ras,p16遺伝子の異常は認められず、3番および9番染色体短腕でのLoss of heterozygosity(LOH)の解析では、本家系の肺癌発症者全員に共通な欠失領域は認められなかった。replication error(RER)は80%(4/5例)と高頻度であったが、ミスマッチ修復遺伝子hMSH2およびhMLH1のLOHは認めなかった。本年度はミスマッチ修復遺伝子の一つであるhMSH3遺伝子のmutation、RERの標的と考えられているTGFβRII(Transforming Growth Factor β type II Receptor gene)、BAX遺伝子内の反復配列を検討したが異常は認めなかった。平成9年度中に家系員の1名が肺癌で死亡され病理解剖が行われた。家族の同意のもとに本例を研究に加わえた。本例の肺癌組織においてComparative Genomic Hybridization(CGH)を行い、染色体異常をスクリーニングしたところ、1p21-31,6q12-qter,9p12-pter,13q12-qterのlossと11q,12q gainと19 whole gainが検出され、この領域に本家系の肺癌発症に関与する癌関連遺伝子が存在している可能性が示唆された。また、肺癌多発家系の肺癌発症者1名および非発症者2名の末梢血リンパ球の染色体核型解析を行った。これらはいづれも正常の核型を示し、本家系には先天的な染色体異常は認められなかった。肺癌多発家系の研究とは別に、肺癌発生の遺伝的背景を解析する事を目的として、40歳未満発症の若年者肺癌18例を対象としてマイクロサテライト解析およびTGFβRII、BAX遺伝子内の反復配列の解析を行った。LOHおよびRERはそれぞれ2例ずるつ(11%)に認めるのみであり、TGFβRII、BAX遺伝子には異常は認められなかった。
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