研究概要 |
(1)既往の研究に関する文献調査:日本建築学会の研究論文を中心に、『古建築の振動特性』及び『木造建築の常時微動測定』に関する文献の収集・整理をほぼ終了し、本研究の基礎的資料とした。(2)構造安定性についての計算方法の検討:建物の固有振動数及び建物各部の剛性の計算方法の検討では、主に古代建築を対象として計算方法の検討を行った。平成6年度内に常時微動測定を行った(6)の建物についてはこの方法により計算値と実測値との照合が可能となった。(3)研究の枠組みについての再検討:(1),(2)の検討を踏まえて、平成7年度以降の研究に向け、研究全体の枠組みの再検討を行った。(4)常時微動測定方法の検討:古建築を対象とした常時微動測定はこれまでに実施例が少ない。そこで測定項目、測定方法、データ処理方法などについて、古建築の測定を指向したノウハウの検討を行った。(5)常時微動測定対象の選定:(4)におけるノウハウを確立するため、対象を構造形式の異なる2〜3の建物に限定した。今年度はまず奈良時代の復原建物を測定対象として選定した。(6)2〜3の古建築に関する常時微動測定の実施:奈良県奈良市・平城宮跡復原建物(宮内省南殿第1殿,第2殿)において常時微動測定を実施した。固有振動数として、1次4.38Hz,2次4.65Hz,3次7.66Hz,4次8.91Hzを得ている。新たに得られた知見として、(1)既往の研究によれば、古代木造建築においては、柱の傾斜復元力と壁の復元力を用いて建物の固有振動数を算出することが可能である。(2)木造建築の常時微動測定例によれば、建物の固有振動数の把握のためには、建物での測定点の直下、又はその測定方向の延長線上において、地盤上の測定を行うことが重要である。
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