研究2年目の平成7年度は、初年度に検討を加えた測定方法に沿って、重要文化財等の古建築及び、復元建物について常時微動測定を行うことを主要課題とした。また、初年度に常時微動測定を行った建築物につき、建築物の構造的なデータを使用して、固有振動数などの計算値を求め、測定値と計算値との比較検討を行った。なお、必要に応じて測定方法や実測データの処理方法に再検討を加えた。 本年度、常時微動測定の対象とした建築物は、奈良平城宮跡復元建物である宮内省西南殿、他2棟、復元建築途中の平城宮朱雀門、法隆寺、金堂他4棟の合計7棟である。このうち、法隆寺金堂他4棟の常時微動測定により、以下の振動特性に関する知見を得た。 1)中門と金堂では、建物の中央部に比べて北側と南側の側柱筋の振幅が大きい。 2)金堂は桁行方向の力肘木から下の部分の剛性が高い。 3)大講堂は、梁間、桁行方向の固有振動数比と壁率の関係が成り立つ。 4)五重塔は、固有振動数は0.9Hzであり、対角線方向に振動する。また、高さレベルにより卓越する固有周期による違いが見られる。 5)五重塔を除く3棟は、梁間方向の固有振動数が1.6〜1.8Hzの間にあり、桁行方向のほうが若干高い値を示す。 一方宮内省の復元建物について、常時微動測定結果と、平面型振動モデルを用いた振動解析結果の照合から以下の知見を得た。 1)南殿第一殿、第二殿とも常時微動測定によると、4Hz台に2個、7Hz台と9Hz前後に各1個のスペクトルピークがあり、振動数の小さい方から順に桁行方向並進、梁間方向並進、ねじれの振動モードがあることが確認された。 2)解析結果と測定結果を比較すると、並進振動の固有振動数、振動モードは比較的よく一致した。ねじれ振動等、高次については必ずしも良い一致は得られず、剛性の算出などに検討の余地があると思われる。
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