平均原子価二核錯体の位相制御構造の創製と動的過程

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06453052
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 前田 米藏 九州大学, 理学部, 助教授 (30037262)
• 研究分担者: 杉原 真司 九州大学, 理学部, 教務員 (10253402) ; 日高 昌則 九州大学, 理学部, 助手 (50037298) ; 西田 哲明 九州大学, 理学部, 助手 (10112286)
• キーワード: 位相制御構造 / 二核錯体 / 平均原子価 / 動的過程

研究概要

Ph(CH_2)_nCOOH(2),あるいは、HOOC(CH_2)_nCOOH(3)に選び、nをいろいろ変えた錯体を合成し、メチレン鎖の長さの違いによってできる積層構造の変化,および構造位相と鉄原子間電子移動速度との関係を究明してきた。その結果、(3)は鎖の長さが3個ずつ増すごとに電子移動の速さが速くなることが見いだされた。(1)はnが4より大きいと電子移動速度が速くなること、(2)は複雑な変化を示すことがわかった。以上の研究については名古屋コンファレンスで発表(平成8年3月)予定で、また投稿準備中である。配位子bpmpをアレンジした9座配位子では低スピン-高スピン錯体が得られ、この新規な興味ある事実を平成7年度の錯体化学討論会で発表すると同時に、J. Chem. Soc. Dalton(1995)に投稿した。
2。(2)の系ではフェニル基に置換基をつけると置換基の種類により電子移動速度が速くなることが確認された。これらの錯体については電子移動のおこる温度前後での構造変化を究明するために単結晶を作製し、X線回折の測定し、研究結果は現在投稿準備中である。
3。どんな軌道の重なりで電子移動がおこっているのかを、理論的に究明するために構造データと併せてCACheをもちいて分子軌道の計算も進めており、実験的にはX線解折線構造解析よりFe1-O-C-O-Fe2の平面性と角度及び2つのカルボキシル基の間隔が重要であることが解明した。

研究成果

• [文献書誌] 前田米藏,他2名: "Mixed-Valence Dinuclear Iron Complexes with Nonadentate Polypyridine Ligand: High-Spin Iron(II)-Low-Spin Iron(III)" J. Chem. Soc., Dalton Trans.,. 1995. 3533-3536 (1995)
• [文献書誌] 前田米藏,他2名: "Correlation between Detrapped Valence States and Molecular Packing of Mixed-Valence Dinuclear Iron(II,III) Complexes of a Septadentate Polypyridine Ligand," Chem. Lett.,. 1995. 65-66 (1995)
• [文献書誌] 大塩寛紀,他3名: "Incorporation of MnIII and FeII Complexes into TCNQ Networks: Preparations,Crystal Structures, and Magnetic Properties of [MnIII(salen)(TCNQ)0.5]・・・・" Bull. Chem. Soc., Jpn.,. 68. 889-897 (1995)
• [文献書誌] 林 宜仁,他5名: "Synthesis, Characterization, and Reversible Oxygenation of μ-Alkoxo Diiron(II) Complexes with the Dinucleating Ligand N, N, N′,N′-Tetrakis{(6-methyl-2-" J. Am. Chem. Soc.,. 117. 11220-11229 (1995)