研究概要 |
マイトトキシンは、植物プランクトンである渦鞭毛藻が生産する分子量3422のポリエーテル化合物であり、天然物中最大の分子量と非常に強い毒性によって、現在最も注目されている海洋天然物のひとつである。われわれは、平面構造を1993年に明らかにしたが、立体化学に関しては未解明の部分が多い。エーテル環が連続している部分については平面構造の決定と同時に立体化学も帰属できたが、分子両端の側鎖とエーテル環を繋ぐ部分の立体化学に関しては不明である。本研究では、残る立体配置と絶対配置を決定してマイトトキシンの構造を完全に決定することを目的とした。 構造決定には、NMRのスピン結合定数と分子力場計算を併用した方法を開発し、おもにC1-C14とC134-C142の側鎖部分に関して立体化学と回転配座を求めた。すなわち、スピン結合定数(^<2,3>J_<C,H>と^3J_<H,H>)から求めた2面角の情報と、不斉炭素間や隣接するメチレンの回転配座とを可能なジアステレオレオマ-について比較し、最も一致したものを天然物の立体構造とした。その結果、側鎖にある11個の不斉炭素のうち9個の帰属に成功した。また、エーテル環をつなぐ部分の立体配座(F-G環の間の2個の不斉炭素とM-N環の間の2個の不斉炭素)については、合成により推定することができた。今後、可能性のあるジアステレオマ-を合成して確認して行く予定である。また、絶対構造決定に向けてフラグメントCの合成にも着手した。
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