研究概要 |
本研究では、クローニングしたH2受容体遺伝子に人工的に点突然変異導入、あるいはTruncation導入など遺伝子操作技術を用いて変異遺伝子を作成し、これを遺伝子発現系に導入し、正常の遺伝子を発現したものと受容体機能、あるいは受容体細胞局在などを比較検討することによって、さまざまな受容体の機能発現に関わる問題を明らかにすることを試みるものである。 昨年報告した糖鎖付加部位を変異させた遺伝子発現系(Biochem.J.310,553-558,1995)を用いて,ヒスタミンH2受容体の2つの情報伝達系であるカルシウムシグナルとcAMP系の相互作用、特に受容体機能調節について細かく検討した。カルシウム系のシグナル一特に蛋白質燐酸化酵素C(C-kinase)系が、脱感作をむしろ起こりにくくしていることを見いだし現在このセカンドメッセンジャーレベルでの相互作用について論文をまとめ投稿中である。さらにヒスタミンH2受容体の脂肪酸添加部位に変異を加えた遺伝子、受容体C末端欠損遺伝子などについて発現系を用いて、その脱感作メカニズム、受容体の動的な細胞内トポロジー変化について検討した。これらは96年の米国消化器病学会で発表を予定している。 さらに、以前から我々が報告してきたH2受容体脱感作の機構として受容体キナーゼあるいはC-キナーゼの影響を検討するため、受容体燐酸化の有無をタグ標識受容体を作製して免疫沈降法後SDS-PAGEで検討した。この方法で予備的検討であるが初めてH2受容体の燐酸化が起こっていることが確認された。現在その燐酸化部位、燐酸化酵素の詳細な検討を開始している。
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