研究概要 |
脳死体あるいは生体からの臓器移植は毒生医学がヒトで縦横に活用できるまでの過途的な医療と位置づけてはいるが、現状ではまだまだ臓器移植に頼らざるを得ない。得た移植片の保存、拒絶反応の防止あるいは回避に関する検討には改良出来る余地が残されている。そこでわれわれは、癌細胞がCTLやNKの攻撃からうまくのがれているメカニズムの一つにパーフォリンインヒビターの発現調節が関与しているとつねずね考えている。そこで癌細胞の機能をウシ血清などの影響を受けることなく知ることの出来るわれわれが開発した無蛋白培養法を用いて、66株の癌無蛋白培養細胞およびそれらの培養上清にはたして強力なパーフォリンインヒビターが存在するかどうかを検討した。その結果、ほとんどの細胞でその存在を確諏することが出来た。そこで、もっとも活性の高かった胃ガン株HGC-Y1,膵ガン株HFC-Y3の細胞ホモジネートおよび培養上清からパーフォリンインヒビター活性を指標に、これを精製した。幸い、N-末端アミに酸配列を明らかにすることが出来た。配列はPEPAKSAPAPKKGSKKAVTKの20アミノ酸が判明し、その配刻はhuman histone H2Bと一致していた。histoneは細胞膜の裏打ちもしていることから本物質がパーフォリンインヒビター活性を持っていてもおかしくないと考えられた。ちなみに、市販のウシhistoneのパーフォリンインヒビター活性を検討したところ極めて高いことも判明した。なお、ウシhistoneをラットに大量投与してみたが組織学的な異常所見は見られなかった。ラット同種心移植の系でin vivoでの活性を観る計画を立てていたが、事情で実現していない。
|